菌類漫遊記

キノコもカビも越境しながら、知識を深めてゆきたい所存です。

2024/04/05 オオシトネタケ Gyromitra parma

緑地に行ってきた。木立の中のリター置き場脇の広葉樹の立ち枯れ(樹種不明)にフクロシトネタケの類が生えていた。実は今まで見たことがなかったので結構嬉しい。

 

どこかのブログで見たのでシトネタケ属Diatrypeだと思っていたのだが、フクロシトネタケやオオシトネタケなどその類のやつはフクロシトネタケ科のフクロシトネタケ属Discinaやシャグマアミガサタケ属Gyromitraらしい。調べてみると和名「シトネタケ」は確かに形態が全く異なる菌のようだ。周囲にシトネタケ科だと言いふらしてしまったので、少し恥ずかしい。

 

この科でフクロシトネタケ的な外見をとるのは

・フクロシトネタケ Discina anscilis

・オオシトネタケ Gyromitra parma

・ナミコブシトネタケ Gyromitra leucoxansa

・コブシトネタケ Gyromitra convoluta

だろうか。日本きのこ目録には他にオオナミチャワンタケ(青木)とツチイロヒメチャワンタケ(池田)の記載があるが、どちらも手持ちの資料にはないので後日要確認。

 

前置きはここまでにして、ここから観察記録。こういう肉質の子嚢菌は肉眼だとどこを見るのがいいんだろう。

 

【肉眼的特徴】

子実体外形:長径5㎝、短径4㎝、高さ1.5㎝(柄がついていたら2㎝はあったはず)。著しく波打った、裏返しの茶椀型。表面はわずかに紫がかった褐色で、一部黄褐色。平滑で、光沢はなくマットな質感。

 

子実体裏面:ごく短い柄があったようだが、採取時に折れてしまった。断面はクロノボリリュウのように著しく波打って、空洞。クリーム色。平滑で、粉を吹いたような印象。

 

断面:表皮、表皮下層、肉、下皮の4層がある。色は順に表皮と同じ、黄土色、表皮と同じ、クリーム色。

【顕微鏡的特徴】

子嚢

径15㎛ほど。内部の顆粒がブラウン運動で振動しているのが見える。メルツァーに染まらない。

 

側糸

先端がやや太まる。子嚢より細い。メルツァーに染まらない。

 

子嚢胞子

太い紡錘形。およそ30×10㎛。


両端は尖らず、いくつもの細かい突起に覆われて鈍縁。表面に網目模様がある。1~3個の油球を内包する。

油浸1000倍

【同定】

最初に挙げた4種のうち、このような胞子の特徴を持つのはオオシトネタケのみ。

 

【コメント】

成熟した子嚢胞子が少なく、探すのに苦労した。1000倍は前回より多少よく見えたが、まだまだ鍛錬が必要だと感じた。

2024/03/11

ムササビタケ Psathyrella piluliformis

試験が終わり、ひと段落したところで約一か月ぶりのキノコ探し。ということで青梅の森を散策していると、コナラの樹下に何やらキノコが発生していた。この時期にそれなりに大きく、まとまった量のキノコを見られると嬉しい。発生環境の写真を撮り忘れたので、白バックで代用。

 

ムササビタケ?

 

紫がかった黄土褐色のひだはナヨタケ科を想起させるが、実際どうだろうか。以下特徴を列挙する。供試標本は写真の癒合した2子実体。

 

【肉眼的特徴】 保育社図鑑と概ね一致

傘 cap

径 19×17mm, 30×25mm

形状 丸山型

色 湿時 濃黄土褐色、乾くと中央から「ス」を生じてやや薄い黄土色になる

粘性 なし

表面 半径の7割ほどの長さの、著しいしわを生じる

 

柄 stipe

径 2→3㎜, 3→5㎜、中部まで頂部と同じ太さだが、基部にかけて太まる

長さ 約25mm, 30㎜

表面 絹糸状光沢あり、やや繊維状、基部には白色菌糸

   頂部透明感のある白色、下部にかけて淡黄土褐色がかる

中心性

中空

ツバ なし

 

ひだ gill

色 紫がかった黄土褐色、縁は淡色

幅 N/A

付き方 N/A

疎密 やや密

大ひだ:小ひだ 1:1

連絡脈 なし

胞子紋 紫褐色

 

肉 

厚さ 縁は薄く、中央部の厚いところで約1.5㎜。柄は0.7㎜ほど

色 黄土色

変色性 なし

味 傷んできたので未確認

匂い 弱い酸味を帯びたきのこ臭=ナメコ?

with スケール

【顕微鏡的特徴】

対物油浸100倍

いやはやひどい検鏡写真だが、どうか許してほしい。コリメート法が言い訳にならないほどの像だ... 精進しなくては。当然4,10,40倍での観察もしたのだが写真を撮っていなかった。ただ子実層托実質が有色、シスチジアがほとんど見られない、胞子が5.3×3.4㎛(なんとn=2!杜撰すぎる)という点は保育社図鑑の記述に一致したので、ムササビタケPsathyrella piluliformisとしていいだろう。こんなクオリティの検鏡にも30分ほどかかってしまったので、シーズンまでに本格的に練習しなきゃな... 先が思いやられる。

 

学名について

Psathyrella:不明

piluliformis:pilulifer(小球を持つ)だろうか。どういうこっちゃ。

シカ糞観察記録 3/19

なにやら生えてきた

数日見ないでいたら、小の方が何やら面白いことになっていた。シンネマなのか、Xylaria系なのか、ぱっと見では分からない。また数日待ってみてから判断しよう。これ以外にも小さな盤菌と思われるものが見えて、とても面白い。家に実体顕微鏡がないのが少しつらい。

 

明日は顕微鏡にミクロメーターを入れてもらうので、いよいよ本格的な検鏡ができるようになる。楽しみ~

シカ糞観察記録 3/11-15


2024/3/11

先日の採集でシカ糞を拾ってきたので、糞生菌目当てに観察してみることにする。採ってきたのは大(長径約15mm)・小(長径約10㎜)二種類で、大の方は明暗二種類の環境に置いてみる。糞生菌培養の方法は国立科学博物館編『菌類のふしぎ』第二版を参考にした。

 

まずダイソーで買ったプラスチック製のカップに水を7割ほど満たし、それに糞を漬けて水を吸わせる。この状態で一晩おいたのち、水を切ってカップの底にキッチンペーパーを敷く。あとは待つのみだ。

 

3/13頃(不確か)

明環境においた大のカップには、さっそくケカビ類と思われるカビが生えてきた。ケカビ自体はミカンやサクラエビで培養を試みた時にも見たが、まだ無性生殖の胞子嚢胞子しか見たことがない。接合胞子もそのうち見たいものだ。ケカビの類はふわふわしていて、なおかつ頂部にかわいらしい球体をつけるところがなかなかよい。ミカンで出てきたものとは種類が違うのだろうと考えると、なかなか興味深い…のだが、検鏡はしていない。だってミクロメーターがないんだもん。

3/14

3/15

よく見ると、大の方には淡黄白色の小さな点も見られる。これもケカビの原基(といっていいのか分からないが)かもしれないが、盤菌だとすれば成長がとても楽しみだ。