菌類漫遊記

キノコもカビも越境しながら、知識を深めてゆきたい所存です。

2024/03/11

ムササビタケ Psathyrella piluliformis

試験が終わり、ひと段落したところで約一か月ぶりのキノコ探し。ということで青梅の森を散策していると、コナラの樹下に何やらキノコが発生していた。この時期にそれなりに大きく、まとまった量のキノコを見られると嬉しい。発生環境の写真を撮り忘れたので、白バックで代用。

 

ムササビタケ?

 

紫がかった黄土褐色のひだはナヨタケ科を想起させるが、実際どうだろうか。以下特徴を列挙する。供試標本は写真の癒合した2子実体。

 

【肉眼的特徴】 保育社図鑑と概ね一致

傘 cap

径 19×17mm, 30×25mm

形状 丸山型

色 湿時 濃黄土褐色、乾くと中央から「ス」を生じてやや薄い黄土色になる

粘性 なし

表面 半径の7割ほどの長さの、著しいしわを生じる

 

柄 stipe

径 2→3㎜, 3→5㎜、中部まで頂部と同じ太さだが、基部にかけて太まる

長さ 約25mm, 30㎜

表面 絹糸状光沢あり、やや繊維状、基部には白色菌糸

   頂部透明感のある白色、下部にかけて淡黄土褐色がかる

中心性

中空

ツバ なし

 

ひだ gill

色 紫がかった黄土褐色、縁は淡色

幅 N/A

付き方 N/A

疎密 やや密

大ひだ:小ひだ 1:1

連絡脈 なし

胞子紋 紫褐色

 

肉 

厚さ 縁は薄く、中央部の厚いところで約1.5㎜。柄は0.7㎜ほど

色 黄土色

変色性 なし

味 傷んできたので未確認

匂い 弱い酸味を帯びたきのこ臭=ナメコ?

with スケール

【顕微鏡的特徴】

対物油浸100倍

いやはやひどい検鏡写真だが、どうか許してほしい。コリメート法が言い訳にならないほどの像だ... 精進しなくては。当然4,10,40倍での観察もしたのだが写真を撮っていなかった。ただ子実層托実質が有色、シスチジアがほとんど見られない、胞子が5.3×3.4㎛(なんとn=2!杜撰すぎる)という点は保育社図鑑の記述に一致したので、ムササビタケPsathyrella piluliformisとしていいだろう。こんなクオリティの検鏡にも30分ほどかかってしまったので、シーズンまでに本格的に練習しなきゃな... 先が思いやられる。

 

学名について

Psathyrella:不明

piluliformis:pilulifer(小球を持つ)だろうか。どういうこっちゃ。